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REPORT

2023

06

/20

カンファレンスレポート『スポーツの舞台で挑戦し続けるパートナーシップのかたち』

#DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE

#パートナーシップ

昨今、スポーツを舞台に展開するパートナーシップでは、ビジネスに関わらず企業の様々な目的を実現し、また社会の課題解決の手段としての取り組みが行われています。本セッションでは、BtoC/BtoBそれぞれのパートナー企業の責任者をお招きし、スポーツへの期待や取り組みの目的、アクティベーションなどの事例等を幅広くご紹介しました。パートナー企業の取組みによりパートナー企業の課題解決はもとより、スポーツビジネスの価値が高まる好循環が実際に体現されている様子がうかがえるセッションとなりました。

モデレーター:醍醐 辰彦様(D5株式会社 代表取締役/株式会社なんでもドラフト 執行役員CSO)

私はこれまで前職のスポーツブランディングジャパン株式会社という会社で、海外のスポーツ団体、主にNFL、NBA、ワシントンウィザーズといった海外団体の日本展開のサポートや日本のスポーツ団体、リーグ、チーム、協会といった団体の事業のサポートに携わってきました。またその中で、スポンサーシップはもちろん、放映権や配信権、直近ではアスリートのサポート、ファンタジースポーツといった新しい領域にもチャレンジしています。

本セッションのテーマは「スポーツの舞台で挑戦し続けるパートナーシップの形」です。アメリカやヨーロッパのスポーツの収益構造と比べると日本のスポーツビジネスにおけるスポンサーシップ、パートナーシップの占める割合は高く、スポーツビジネスとパートナー企業、この両者の関係性はとても大事なテーマだと思います。野球、サッカー、バスケ、その他さまざまなスポーツで色々な形のパートナーシップが昨今見られますが、本日はパートナー企業からみたスポーツ活用の可能性、スポーツと企業のあるべきパートナーシップの形について色々とお話を伺っていきたいと思っております。

本日はDeNA SPORTS GROUPのオフィシャルパートナーでありワールドワイドに事業展開をしている最大手食品会社、マルハニチロ株式会社から臼田 義之様、そして川崎ブレイブサンダースのグローバルトップパートナーであり世界有数の大手総合測定機器メーカー、株式会社ミツトヨ様から中島 幸太様にお越しいただきました。

それではまず臼田様よりマルハニチロの取組をご紹介いただきます。

臼田 義之様(マルハニチロ株式会社 コーポレートブランディング部 部長)

マルハニチロでは、ブランディング、マーケティング、広告、広報を担当しております。本日はDNA SPORTS PARTNERSHIP(DSP)を活用し、企業価値創造を目指すマルハニチロの取り組みについてご紹介します。

・DNA SPORTS PARTNERSHIP(DSP)への協賛の背景・経緯/目的

マルハニチロは2007年のマルハとニチロの2社統合によって誕生した、水産を強みに原料調達や加工食品などの事業を展開する企業です。統合から10年を経て、さらにマルハニチロのブランドを強化するため、2018年に新ブランド戦略をスタートさせCI変更やブランドの再定義を行いました。

その中でアウターブランディング、インナーブランディングにも着手をしていたところ、横浜DeNAベイスターズより球団創設70年記念事業のスポンサー就任の依頼を受けました。そのコンセプトに強く共感し、ブランディング活動の一つとして就任を決定しました。その後、球団の協力のもとメディアの取材や社員が参加するイベント実施などを通して、アウターだけではなくインナーブランディングの取組にもしっかりと手応えを感じ、弊社との絆を大切にしてくださいました横浜DeNAベイスターズとのパートナーシップがその後も継続することとなりました。

・課題解決に向けた”DeNA SPORTS PARTNERSHIP”としての新たな取組

その後3年を経てDeNAベイスターズとのパートナーシップについての手応えはつかんでいましたが、企業ブランディングにおいて課題感は依然、抱えていました。一つは企業認知率における若年層へのアプローチ、2つ目はブランディングのさらなる強化です。この課題解決に向けての施策を検討していた際に、”DeNA SPORTS PARTNERSHIP”という新たな取組の提案がありました。野球にとどまらない、DeNAの3つのプロスポーツ事業との包括的なパートナーシップについて様々な議論を踏まえ、昨年2022年度よりDeNA SPORTS PARTNERSHIP(DSP)として新たな取り組みをスタートさせることになりました。

・DeNA SPORTS PARTNERSHIPの取組事例/効果

弊社がスポーツスポンサーシップに期待する効果指標は大きく6つあります。

①ブランド強化(認知・好感拡大)

②ホスピタリティ(取引先/ファン関係強化)

③社会貢献(スポーツ振興)

④セールス(販促/売上貢献)

⑤インナーブランディング(モチベーション向上)

⑥ビジネス開発(事業育成)

弊社は広告効果を金額ベースで算出しており、2022年度の広告換算値においてスポンサー契約費用を十分に賄える効果が出ました。他にも深夜の人気ラジオ番組にも出稿しており、このラジオCMにもスポーツチームに登場していただき、マルハニチロの認知拡大を狙いながらスポーツ協賛していることも同時に広告宣伝をしています。「マルッハ・ニッチーロ」という主人公が世界の海を股にかけて冒険、活躍するというストーリーです。ぜひお聴きください。

ラジオCM(20秒)「マルッハ・ニッチーロ 船出」編

ラジオCM(20秒)「マルッハ・ニッチーロ 横浜DeNAベイスターズ」編

ラジオCM(20秒)「マルッハ・ニッチーロ 川崎ブレイブサンダース応援」編

また、川崎ブレイブサンダースの選手が弊社のオウンドメディアサイト「サカナクロス」にも出演しています。

アスリートを育む食卓01「川崎ブレイブサンダース」

増田啓介選手は何を食べて育ったか?

「川崎ブレイブサンダース」増田選手、鎌田選手が登場!親子で楽しむ1分間ボールゲーム

プロテニスコーチ・杉山芙沙子さんに聞くスポーツで親子コミュニケーションを深めよう

さらにはSC相模原のSDGs DAYではブース出展をして魚のペーパークラフト制作イベントも実施しました。

インナーブランディング強化においては、社員を巻き込みながらスポーツ協賛企業としての一体感の醸成を図っております。昨年は初めての試みとして社員限定の横浜DeNAベイスターズの野球オンライン観戦会を実施しました。コロナ禍で会社を挙げてのイベント開催が難しい中で社員とその家族が一同に会することができ、社員からも大変好評でした。一連のスポーツ協賛に関する社内アンケートでは、「スポーツ協賛は企業価値向上に貢献している」など総じて積極的な回答を得ております。

・魚の価値向上・価値創造を目的としたアクションプログラム「魚クロス」

マルハニチロならではのアクティベーションの一つとして、魚の価値向上、価値創造を目的とした魚の多様な価値を発信するアクション、「サカナクロス」という取組がございます。これはスポーツファンに向け、選手の活躍を支えるタンパク源の一つとして魚を食べること、すなわち「魚食」も一つのソリューションであるということをDSPでの活動を通じてお伝えしています。水産庁の取組と連動しながら魚食普及、そして魚の価値向上に向けて取り組んでおります。

・課題と今後の展望

まだまだ課題も山積しており、DeNA各スポーツチームとの取組の中でさまざまな権益がありながらも、まだまだ活かしきれておりません。野球、サッカー、バスケットボール、それぞれのファン層には年齢層などそれぞれ特徴があります。その点をしっかり理解・分析し、弊社の様々な商品の販売拡大につなげてまいりたいと考えています。

今後の展望として横浜DeNAベイスターズは20年後に「世界一の野球チームになる」、という明確な目標を掲げています。世界に目を向けているという点においてマルハニチロも同様です。既に海外に多くの拠点があり、売上利益ともに日本以外の比率が高くなってきておりますが、とはいえまだまだマルハニチロというブランドの認知度を世界市場において上げていく必要があります。弊社としても何としても「世界のマルハニチロ」としてDeNAと共に成長してまいりたいと考えております。

————臼田様、ありがとうございました。DeNA SPORTS GROUPの「世界一になる」というコンセプトを多岐にわたる取組で活用されていることがわかりました。

では続いて中島様よりミツトヨの取組をご紹介いただきます。

中島 幸太様(株式会社ミツトヨ グローバルマーケティング本部 販売促進部 次長)

まず、弊社についてご紹介させていただきます。株式会社ミツトヨは1934年に創業し、来年2024年で90周年を迎える精密測定器の総合メーカーです。精密測定器というのは、ものづくりにおいて、ものを測る機械をさしますが、それを総合的に製造・販売している企業です。本社は川崎にあり実は非常にグローバルに展開をしております。海外拠点も日本を含め30カ国以上に拠点があり、60カ国以上でビジネス展開させていただいております。売上比率も国内が2割、海外が8割となっています。

・パートナーシップ検討の経緯

私たちのようなBtoBの製造会社が、なぜバスケットボール、川崎ブレイブサンダースのグローバルトップパートナーになったのか、経緯をお話ししたいと思います。2020年に川崎ブレイブサンダースのユニフォームの胸のロゴが「TOSHIBA」から「Mitutoyo」という名前に変わった時に、「ああ、あの会社だね」、とわかった方は少ないかと思います。でも「Mitutoyoって何の会社だろう?」と思っていただいた方も多かったのではないかと思います。それが私たちの狙いでした。

パートナーシップ検討の経緯としては、ミツトヨが抱えていた課題と川崎ブレイブサンダースの持つ価値が合致したことが大きかったと感じています。

私たちの課題はシンプルに言いますと、ブランドの認知度が非常に低かった、という点です。やはりBtoBの製造業で特定のエリアで突き詰めて商品を出しているため、これまではいいものを作っていればそれで良い、という時代でした。しかしこの時代の流れの中で採用面や地域貢献などで、やはりブランドの認知度が低いことが圧倒的に不利になってきたと感じています。

来年で創業90年を迎えますが、川崎市の高津区に本社を構えながらも、近隣の方には「あの建物は何をやっているんだろう」、といった状況でミツトヨの中身を知られていませんでした。学生さんに関しても理系学生はよく我々の商品を使っていただいていますが、その他にはなかなか知られていませんでした。これから私たちがリーチしていかなければいけない方というのは、これまでのミツトヨを知っている方ではなく、今ミツトヨを知らない方であり、そこが大きな課題となっていました。

その課題に対して私たちも何もしてこなかったわけではなく、例えばCMや交通広告を出すなど色々なことをやってきましたが、なかなか効果が表れることはありませんでした。

その大きな一つの理由は、やはり「知られていない」という前提で、伝えようとするときに伝え過ぎてしまうことだと思います。「ミツトヨは精密測定器メーカーです」というコンテンツを作ってしまうと、「ミツトヨとは何だろう?」と思ってもらえても「精密測定器メーカーです」という話を伝えた途端に「ちょっと関係ないのかな」というコンテンツになってしまっていました。

・「Mitutoyo」ロゴを長期的に世の中に広めていきたい

そういった中で、やはりシンプルにまずはブランド認知度を上げるために、まずはこの「Mitutoyo」というロゴを世の中に広めていくことを長期的にやっていこう、ということが私たちのテーマになってまいりました。一方で「Mitutoyo」ロゴ単体をうまく使っていけるかというと、やはりこれまでそういったPR、企業ブランディングなどを本格的にやってきてはいなかったため難しい状況でした。

その中で、このロゴをうまく運用してくれるパートナーを見つけていくこと、私たちが使うのではなく、パートナーに私たちのロゴを預けて広めていってくれることはできないか、という考えでパートナーを探す活動を行っていました。その候補の一つにスポーツチームという選択肢が出てまいりました。

なぜスポーツチームかというと、やはりスポーツチームにとってチーム自体が有名になっていくことは大きな命題であると考え、その目立つところにしっかりとロゴを入れていくことで私たちのロゴも世の中に広げていくことができると思ったためです。私たちから伝えるのではなく、ロゴを知った人が私たちを知りに来てくれる、そういう関係性、環境を作りたいと考えスポーツチームへの協賛を選択しました。

・「川崎から世界へ」川崎ブレイブサンダースとのストーリー面での親和性

次になぜ川崎ブレイブサンダースと契約したかという点についてです。当時、私たちが川崎ブレイブサンダースと話をし始めたときは東芝からDeNAに事業継承されたタイミングでした。その時、「これから川崎ブレイブサンダースを日本一のチーム、アジアNo.1のチームにしていく。そのためにチームのブランディングをかなり強化していく」という話をききました。アジアNo.1クラブを目指す、川崎市内での認知度を高めていく、という点について私たちの課題にも合っており、川崎から世界でビジネスをしている私たちとのストーリー面での親和性も感じ、川崎ブレイブサンダースと契約することとなりました。

スポーツ協賛も初めての試みだったので、どのように川崎ブレイブサンダースと取り組んでいけるのかという不安もありましたが、非常に親身に私たちの足りないところを補おうとしてくれました。

・アクティベーションの検討

先述したとおり、私たちはBtoBの製造業ですが、企業ロゴをスポーツチームのユニフォームの胸に置くことは私たちにとって非常に大きな一歩であり、大きな投資でもありました。

スポーツ協賛の狙いはブランドの認知度を上げていくという点にありましたが、アクティベーションにおいては私たちのブランドを理解、共感してもらうためのフェーズと捉え、ミツトヨらしさをどんどん出していこうと考えました。予算をかけて派手なことをするというよりかはミツトヨは小さなことをコツコツとするような会社なので、そのイメージをどんどん皆さんに理解していってもらえるよう、ロゴに興味を持った方にミツトヨがどんな会社なのかを知ってもらう機会としてアクティベーションを行っております。

本格的なスポーツ協賛は初めてだったので、アクティベーションについてはミツトヨは川崎ブレイブサンダースの「Global Top Partner」として、「Modern & Friendly」というテーマで検討しました。「カタイ会社、マジメな会社でも実はすごく面白いことをやっている。私たちは本当はもっと地域と、皆さんと関係性、交流をもちたい。」といったことを示せるようなアクティベーションを考えていきました。

アクティベーションの具体的なテーマは2つあります。

-Internal Actions

社内を巻き込み応援機運を高める

-External Actions

川崎から世界へ

この2つのテーマのもと、色々なことを行ってきました。

・Internal Actions:社内を巻き込み応援機運を高める

Internal Actionsとしては社内を巻き込んで応援機運を高めていくというところを行ってきました。実際に応援機運を社内で高める取組も初めてだったため、やはり大きな投資でした。中には必ずしも社内の従業員みんながポジティブな反応ではなく、ネガティブに感じる方もいたと思っています。

そのため、社内を盛り上げていく上でもネガティブな感情の方にはポジティブに、ポジティブな感情の方にはよりポジティブに変わっていっていただけるような施策を多く展開していました。そのためには、やはり派手なことをするというよりは、社内のみんなが喜んでもらえるような小さな取り組みをコツコツとやっていくことが非常に大事でした。

例えば川崎ブレイブサンダースの選手が弊社の工場の中を回り、製造に関わる方と話していただく機会をもちました。また工場内でアナウンス(「今日は定時退社日です」など)が流れるのですが、そこを篠山竜青選手に出ていただいたり、ニック・ファジーカス選手には英語で、スペイン人の選手にはスペイン語で話してもらうといった工場内アナウンスを入れるなどして社内を盛り上げていく活動をどんどんやっていきました。

弊社はTwitterで川崎ブレイブサンダース応援アカウントもあり、そういった小さな活動をどんどんとつぶやいて、ファンの方にもアピールする活動も欠かさず継続して行っています。

さらに弊社の食堂を運営していただいている企業様が偶然にも川崎ブレイブサンダースの選手の食事の管理をしてる企業と同じであることもわかりました。であれば試合前日に「応援メニュー」を社内食堂で出そう、ということで「カツで勝つ!」と銘打った食堂メニューの開発も行いました。

これがTwitterでも話題になり、「ぜひ食べたい」というお声もいただきました。そういったTwitterでの反応を得て「出張 ミツトヨ食堂」という施策を冠ゲームで行いました。キッチンカーを出して実際に社員食堂で出したカツカレーなどをなるべく安く提供して食べていただく機会を設けました。

これも非常に評判がよく、今シーズンでも行いました。このような形でインターナルな取組でも社内の応援機運を高める活動をしながら、またそれをTwitterで伝えることでミツトヨらしさをファンや地域の方に感じ取ってもらえるようにしてまいりました。

・External Actions:川崎から世界へ

External Actionsのテーマは「-川崎から世界へ- バスケを通してグローバルな視野を」です。2020年に川崎ブレイブサンダースとグローバルトップパートナーシップ締結をしたすぐ後にコロナ禍となり、海外に行けない、なかなか人と接する機会が持てないような時代になってしまいました。そのためコロナ禍で断念した施策もありました。例えば外国籍選手との英語でのバスケット教室や、ユース・スクール生などの海外留学支援などです。弊社は30カ国以上に拠点があり、中にはアメリカやフィリピン、台湾などバスケットボールの盛んな地域にも拠点があります。そういったところで本場のバスケットボールを感じてもらう機会も提供したかったのですが、コロナ禍では叶いませんでした。しかしそういった状況でもファンの方とのエンゲージメントを高めていくのは非常に大事なことなので、コロナ禍でもチケットのプレゼントキャンペーンや冠試合での「出張 ミツトヨ食堂」、キッチンカー出展やブース出展などでのお客さま、ファンとの交流やTwitterでの応援など、できることをコツコツとやりました。

その中でもグローバルカンパニーだからこそできた施策として英語企画があります。ニック・ファジーカス選手を講師に小学生にオンライン英会話教室を行いました。コロナ禍でできることとしてオンラインが限界ではありましたが、External Actionsとしては英会話教室が終わった後に弊社からたくさんの社員が海外へ出向していることや、海外でのビジネス経験のある社員が多くいること、海外で働く経験についてイタリアとインドに赴任した社員が登壇し子どもたちに話す機会を設けました。

まだまだ私たちはミツトヨのブランドを世の中に広めていく過程にあります。川崎ブレイブサンダースとの取組を通して地域やファン、学生などの方々にミツトヨとは何者であるかということをこれからも伝えていきたいと考えています。

————中島様、有難うございました。初めてのスポーツ協賛ではありながら、もう既にさまざまなメリットを活用されていてまさにスポーツ協賛を課題解決の手段としながらチームと共に歩んで活用されていることがよくわかりました。筋書きのない感動、スポーツのストーリーに企業の理念や姿勢、活動を重ねて共感を得ることは理にかなっており、スポーツにしかできない取組だと思います。露出やブランディング活動の課題解決につなげるためにどのようなことを意識していますか?またどのような部分にアクティベーションにおけるメリットを感じられていますでしょうか。

・臼田様

そもそもの話になりますが、なぜ企業が広告を出すのかを考えるとその目的は”共感を得て普及させること”にあると考えています。今これだけ広告媒体も多様化される中で、私たちもどうしたらマルハニチロをまずは認知していただけるのか、どのような会社であるかを理解していただけるか。知っていただかないことには共感を得ることもできません。共感を得て初めて、スーパーマーケットに行きマルハニチロの冷凍食品があり、「あの会社ね」と手にとっていただき食べていただく、そのスパイラルを作り出すためにも、まずは認知していただいて、会社を理解していただいて、そして共感を得る、そこで初めて”普及”が始まります。

ではそのときに、どのような媒体を使えばいいか。一つの選択肢としてお客さまに一番リーチしやすいのはスポーツという媒体だと考えています。

その理由はやはり双方向コミュニケーションが非常にしやすいこと、お客さまとのコミュニケーションをとりやすい媒体になるという点にあります。このようなメリットを意識しながらスポーツを活用していきたいと思っています。

————ミツトヨさんは、ともすると一般のお客さまにはなかなか理解されない、お客さまと少し遠い業態と仰ってましたが、スポーツを通じてコミュニケーションすることでより身近に感じていただけることを実際に感じられたことはありますか?

・中島様

私たちミツトヨの製品は私たちがリーチしたいお客さまの生活の一部にはなかなかならない、なりえないと思っています。その中でも私たちの会社を支援して頂けるような状況を作るためには、やはりお客さまの生活の一部となり、「この会社が必要」と感じていただけるようにならなければなりません。私たちの製品だけでその状態に至らないのであれば、スポーツは日々の感情をそこで出していく、愛していく、生活の一部になっていくものなので、そのチームを通してミツトヨも好きになってもらいたい、もっとミツトヨのことを知ってほしいと考えました。

ミツトヨの川崎ブレイブサンダース応援Twitterを見ていると、ミツトヨを知って理解していただいたことについてのつぶやきが増えてきていたり、中には「ミツトヨで働いてみたい」「ミツトヨの商品って買えないんだよね?」など、今までになかった反応も出てきています。

さらに驚いたのはプレゼントキャンペーンをやると最初は川崎・関東エリアの方が多かったのですが、今では例えば福岡、北海道、日本中のいろいろなところでミツトヨのキャンペーンを知っていただけていて、その方々もブレイブサンダースのファンなのです。

先程申し上げた川崎ブレイブサンダースのブランド力が上がっていく過程に私たちも乗っかっていきたいという意味では、いまそのとおりに動いてきているのかなと思っています。

————BtoBの業種でもお客さまの反応を得られているのでしょうか?

・中島様

初めはブランディング面の効果だけかと思っており、営業活動でお客さまからの反応はあるのか少し疑問ではありました。しかし営業所単位で「お客さまでファンの方がいるんだよ」とか、「あの方のお子さまがファン」といった反応が年々増えてきています。

————もう一つの大きなテーマであるインナーコミュニケーションについては実際に社員の方々の一体感や共感を作っていくにあたって難しかった点や乗り越えた点はありましたか?

・臼田様

インナーコミュニケーションに関しては正直まだまだ途上だと思っています。一部の社員や私たちの自己満足にだけ陥りたくない、スポンサーになっていることそのものが目的になってしまうことだけは避けたいと思っています。

あくまで全社利益につなげていく、社員の日々の営業活動につながっていかないことには意味がないと思っています。そのためにも、先程の繰り返しになってしまうのですが、まずは知っていただく機会を何とか作っていきたいです。その上で全国津々浦々、営業の皆さんがアクティベーションの一環としてプロモーションも含めた営業活動ができます。実商売にいかにつなげていくか、というところがポイントになると思っていますが、まだまだ発展途上です。

・中島様

川崎ブレイブサンダースのグローバルトップパートナーになるにあたり、社内の声としては最初は私たちマーケティングの部門だけが乗り気になっているだけなのではないかと感じました。ただ私たちは川崎市高津区に本社があり、そこでも800人近くの社員がおり、川崎ブレイブサンダースの試合会場も非常に近いので、まずは試合を観てもらう機会を作るという取組をこの3年間、コツコツとやってまいりました。

そしてやはり一度でも川崎ブレイブサンダースの試合を観にいくと、やはりチームとして本当にアジアNo.1、日本でも一番のチームになっていこうという本気度が非常に感じられ、パートナーシップの大きな後押しにもなりました。チームとしての盛り上がりを従業員が感じることで、ネガティブな声というのも少なくなりポジティブに変わっていく様子を感じました。

社内向けの活動をしていく中でいきなり皆さんがポジティブに変わるってことはまずないと思っていますが、小さな活動からネガティブな人をポジティブに変えていくことを続けていくとある日突然、大体ポジティブな感じになっているような形になるのかなというのが、当社の経験値として語れるところです。

————一気に理解をいただくというよりは、地道に真摯にやっていくということですね。

・中島様

そうですね。後はトップを巻き込むことも大事だと思います。弊社の代表が川崎ブレイブサンダースの元沢社長と対談した記事を読んで会社としてのこのパートナーシップへの本気度みたいなものが伝わりネガティブからポジティブに変わったという従業員も中にはいます。裾野の活動とトップを巻き込んで行っていく活動、それはすなわちトップメッセージとして社員に伝わりますので、そのバランスが大事なのかなと思っています。

————確かに自分の会社がスポーツを介して外向きに発信したポジティブなものが、また中にもポジティブなものとして返ってくるというのは大いにありますね。

少し視点を変えて、マルハニチロさん、ミツトヨさんともにスポーツを通じて社会貢献に注力されています。例えばマルハニチロさんのサカナクロスの取組やミツトヨさんのお子さま向け英語教室など。スポーツを通じた企業の社会貢献について、相性の良さをどこに感じていられるか、スポーツだからこそ企業と一緒にできる社会貢献の形について感じられていることはありますか?

・臼田様

スポーツ事業そのものが地域に根ざした事業展開をされているので、そこにスポンサーシップをすること自体が地域社会の貢献につながっていくと思います。また、マルハニチロという会社がどんな会社なのか、社会貢献や環境に優しい活動をしていることをスポーツ事業とのパートナーシップにより別の視点からみていただける機会を得られるとも思います。

・中島様

私たちは地域の子どもたちに対してSDGsや地域貢献においてバスケットボール、川崎ブレイブサンダースを通して、子どもたちがバスケットボールに触れる機会、教育の機会を増やしていくことに重きを置いています。

川崎ブレイブサンダースのSDGsプロジェクト「& ONE」の活動にも協賛しており、武蔵小杉駅の高架下にあるバスケットボールステーション「THE LIGHT HOUSE KAWASAKI BRAVE THUNDERS」(ザ・ライトハウス)という施設に来た子どもたちに向けてチケットのプレゼントのキャンペーンを行うなど、なるべくミツトヨが分け隔てなく平等に子どもたちスポーツに触れる機会を提供する、その手助けができればと感じています。

また私たちミツトヨは社会のインフラに関わる製造業であり、企業活動そのものが社会貢献だと思っていますので、ブランド活動を通して企業活動の隅々まで知っていただくことは、企業の社会貢献活動を知ってもらえることにもなると思っています。

————パートナー企業がスポーツをサポートし、地域に貢献し、競技の普及につながり、企業活動に返ってくる、この三方良しの循環を生み出すことが非常に大事ですね。チームと地域に密着して取り組むことの価値にお考えをもって活動されていることにとても感銘を受けました。

スポーツチームもパートナー企業に寄り添い、一緒になって価値を出すということに各チームも一生懸命取り組んでいますが、今後DeNA SPORTS GROUPとのパートナーシップを通じて、どのようなことを達成していきたいとお考えですか?

・中島様

私たちは川崎ブレイブサンダースのグローバルトップパートナーとして活動していますが、グローバル感を出すことについては予定したことの半分くらいしかまだまだできてないと思っています。

これからも川崎ブレイブサンダースとのパートナーシップを通してミツトヨがグローバルカンパニーであることをもっと皆さんに感じていただいてリーチしたいと考えています。そこが一番大きなポイントだと考えております。

・臼田様

私たちは食を提供する企業として、食の力でとにかく世の中を元気にしたい、どちらかというとフィジカルな肉体的な部分を元気にして健康にしていきたいという思いがあります。

スポーツにはやはり熱気、歓喜、勇気といったものを通じて元気にする力があると思います。そういったスポーツの持ち力と、私たちの食のちからをうまくクロスさせて、新しい化学反応を起こして共に世界に向かっていきたいと思っています。

————スポーツの価値をさらに高めるにはスポーツチームと企業がタッグを組み、循環を大きくしていくことが間違いなく必要と確信するセッションになりました。有難うございました。

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