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REPORT

2023

06

/20

カンファレンスレポート『DeNAが見るスポーツビジネスのいま』

#DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE

南場自身が感じた、スポーツの力、大きな喜び、「筋書きのない感動」

スポーツの喜びを取り戻すシーズンの幕開けへ

『DeNA SPORTS GROUP』のこれまでの歩みや経営方針をお伝えしながら、日本のスポーツ産業をさらに盛り上げていくことを目的に初開催した「DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE 2023」。まず初めに横浜DeNAベイスターズのオーナーでもあり、女性初の日本経済団体連合会副会長も務める南場智子がスポーツビジネスに込める思いを語るセッションからカンファレンスが幕開けしました。

南場自身が感じた、スポーツの力、大きな喜び、「筋書きのない感動」

DeNAがスポーツ事業に参入したのは、私たちがベイスターズを取得した2011年です。縁起の良い兎の年で、あれからちょうど干支がひと回りしました。今やプロ野球・横浜DeNAベイスターズ、プロバスケットボール・川崎ブレイブサンダース、プロサッカー・SC相模原、3大プロスポーツそれぞれにチームを有し、運営する体制となっております。そしてそれらすべてが神奈川にあります。私たちは陸上チーム、長距離陸上・DeNAアスレティックスエリートも持ってまして、これも神奈川にございます。神奈川にまずこだわって、一つの地域にしっかり根ざして取り組んでいこうという考え方で運営しています。

ベイスターズを取得したことにより、贔屓のチームができることの喜びを知りました。毎日がオリンピックのようで、本当に生きがいと言っても過言ではないような喜びを味わえるようになりました。私は本当にスポーツが好きです。経営者、オーナーである前に大ファンになってしまいました。

DeNAはインターネット事業を中心に展開しており、お客さまに喜び、Delightを届けようと頑張っています。どのくらいDelightを提供できたかは数字やサポートデスクに届くお客さまの声、オフ会なども実施して確認するものの、それほどお客さまが喜んでいらっしゃる姿を目の当たりにする機会には恵まれていない事業です。

しかし私たちがスポーツ事業を運営するようになって初めてスタジアムに足を運び、このような光景を目にしたとき、本当にこみ上げてくるものがありました。素晴らしいものを預からせていただいた、人を喜ばせることはとても幸せなことなのだと実感しました。新潟にいる父の晩年もなかなか会話が減っていたのですが、試合の話をするのがいい口実となり、お互いに電話をかけられるようになりました。

スポーツは何かこう生活や生きざま、人生に深く入り込んでくるものがあります。このパワーは「筋書きのない感動」というのでしょうか、筋書きのない悔しさ、喜び、連帯感、本当に格別のものがあることを、多くの人がそれを私よりもうんと早いタイミングで気付いてらっしゃることなのですが、私はDeNAでチームを取得することになって遅ればせながら実感しました。

スポーツを通じて、自然と芽生える感謝の気持ちと感動

そして、その素晴らしいスポーツの現場はファン、選手、そしてスポンサー様がいて成立する訳ですが、そこでチア、グラウンド整備、スタジアム管理、ビールの売り子さん、スタジアムの整備、飲食店舗の方々、600人ぐらいが一緒に働いています。本当に多くの方に支えられていることも感動することで、スタジアムへよく足を運ぶようになって実感しました。それはまたビジターでも同じようにたくさんの方に支えられています。かつまだ若い選手たちにもマイクやカメラを向けてくださるメディアの方々、選手たちのアマチュア時代の指導者の方々など、色々な方に感謝の気持ちを自然と持つことができます。これも当たり前のことですが、非常に良い気づきでした。

感謝と感動の気持ちを与えてくれるスポーツは本当に素晴らしく、野球がシーズンオフの時はもう心に大きな穴が開いてしまうこともありましたが、今は川崎ブレイブサンダースを取得したことにより、ほぼオールシーズンでハイシーズンになってました。さらに最近はJリーグ、SC相模原にも参画しとても賑やかになってきています。ここまで縷々述べましたけれども、「単なるファンじゃないか」と言われると、答えは「YES」です。

DeNAのスポーツ事業で大切にしている6つの考え方

続いて、DeNAがスポーツ事業に向き合ううえで大事にしている大きな6つの考え方について話しました。

1.ファンのDelightが最上位

一番大切なのは「ファンの気持ち」です。実は私たち運営してる側の社員それぞれが実感していることですが、「ファンの気持ち」、これを一番大切にしようということが、言うまでもなく一番大きなプリンシプルです。ファンのDelightを最上位に置くこと、これがスポーツ事業の価値のほぼ全てであり、ファンのDelightを維持し、発展させるために他の全てがあるということを決して忘れないでやっていくということが最も大切です。

2.ビジネスとして成り立たせる

そのために私たちはこのスポーツ事業を「ビジネスとして成り立たせること」が極めて重要と捉えています。アマチュアリズム、スポーツはどちらかというとお金と絡めて考えたくないという感覚がまだ日本には強いように感じます。しかし私たちはプロスポーツである以上、スポーツ事業それ自体でしっかりと収益がでていること、そしてその収益を拡大していくということが極めて重要であるというスタンスに立ちます。少し経営に余裕がありタニマチ的な経営をするというやり方もありますが、会社の繁栄というものに永遠は絶対にありません。親会社の浮沈にスポーツチームが左右されるということがあってはいけないと思います。親会社の浮沈によりチームの身売りだという話になりますと、せっかく感動を届けてくれる新聞やメディアがそういった話でいっぱいになり選手もファンも心配になります。目の前の感動のプレーに集中できなくなる、そういった事態を避けてスポーツの素晴らしい喜びを拡大していくために投資ができる余力もどんどんつけていかなければいけません。私たち事業会社は事業を回すことのプロであるはずですから、そこでしっかりと力を発揮していくことは私たちのスポーツ産業に対する最大の貢献であるはずと思っています。選手たちにもこの教育をしています。選手の報酬はどこからきて、どう払われてるのか、そういったことを学んで選手たちはファンサービスにも精を出すという形になってきています。

そして、このビジネスとしてのスポーツもまだまだ伸びしろがあります。日米の市場規模を比較するとGDPの差以上に大きく差が開いています。この差を考えるとまだまだ伸びるはずです。なぜならスポーツが私たちに与えてくれる感動に差が全くないからです。素晴らしいコンテンツを手にしていながら、これを大きな需要にできていないという日本の状況を、みんなで力を合わせて解決をしていく。その余地がたくさんあるということです。これを一つ一つシューティングし、日本ならではの挑戦の機会もハングリーに探っていきたいといと思っております。

3.リーグ=劇場 皆で栄える

そしてその需要はDeNAだけがどんなに力んでも伸ばすことが難しく、セリーグ・パリーグ、B.LEAGUE、Jリーグを「劇場」と捉えて1社ではなく皆で栄える、という考え方が非常に重要です。私どもがベイスターズを取得した時、各オーナーさまにご挨拶に伺った際、当時のオリックスのオーナー宮内さんから「リーグ、あるいはNPB、プロ野球というのは一つの劇場なんだよ。みんなでその劇を盛り上げていく、その気持ちを忘れないでね」と仰ってくださいました。それは本当にありがたい言葉だと今でも大切にしています。DeNAは当時もまだ新興企業であり、一生懸命生き残り、競争に勝ち上場して、株主、キャピタルマーケットに認められるために自分たちのことで精一杯でした。その私たちが自分たちだけではなく、皆で力を合わせて、この劇場、事業を盛り上げていく。これまでとも違う、また新たなマインドセットが必要なのではないか、会社もプロスポーツチームを取得してまた一歩成長できるのではないか、そんなふうに思ってスポーツ事業に取り組んでおります。

4. 「長い時間軸」

そしてもう一つ大事なことが「長い時間軸」です。インターネット事業に携わる私たちにとっては「3カ月先は闇」という側面もあるのですが、最近はDeNAも本当に長い事業に取り組んでいます。インターネット事業はどうしてもタイムスパンが短くなりがちですが、スポーツはどうでしょうか。ベイスターズは1929年に今のマルハニチロさんにより下関で生まれました。それから長い年月をかけ、川崎、横浜の人々に受け継がれて、そして私たちも参加をさせていただいて、新しいページを加えていく。大変に長い時間軸のものです。スポーツというコンテンツは、このように私たちという存在よりもはるかに尊いものがあるんじゃないか、それを常に意識して取り組もうと思っています。選手の人生を考えても同様に、アマチュア時代に指導を受けて、現役で活躍をして、その後のセカンドキャリアをどうやっていくのか、長いスパンで考えていくことが重要だと思います。ファンの視点に立っても同様です。子供の時の光景としてプロスポーツのファンになるということがよくあります。両親、おじいちゃん、おばあちゃんの思い出や経験もとても大きな影響を与えます。横浜で「自分と親父は年に一回は、沖縄のキャンプに来ることを生き甲斐にしていた」といったお話も聞きます。最近では「昨年のベイスターズは1997年優勝前夜の状況と本当にそっくりだ」なんてこともネットでもよく言われました。こんな長いスパンで語られるコンテンツはなかなかないと思います。私達もその思いで、長いスパンでコンテンツをお預かりして10年後、20年後、30年後、どうなっていたいのかを考えて取り組んでいこうと思っています。

5.物理環境との一体経営

そして5番目に大切なことはスタジアム・アリーナ、物理的環境との一体経営をできるだけ目指していこうという方針をもっていることです。もちろんスタジアム・アリーナを取得するかどうかについては、それぞれの事情があります。ただ、観戦して感動していただく場所、思いきりプレーをしてもらう場所、この場所のあり方はコンテンツの価値に大きな影響がある、というのが私たちが得た学びです。場所のあり方として、スタジアム・アリーナとの一体経営をできるだけすること、私たちが運営主体になれない場合も運営主体としっかり連携して興行を盛り上げるということがとても大切になると考えています。

6.熱狂を”まち”のDelightへ

そして最後に、そのスポーツの喜びをスタジアム・アリーナを超えて、まちに染み出させていくこと、熱狂をまちのDelightにしていくという視点も野心的に持ち続けたいと思います。例えば「ボールパークファンタジア」、これはシーズンオフの寒い時期に行うイルミネーションイベントです。例年はスタジアムの中だけで開催していましたが、直近では日本大通りにも出て実施しました。スタジアム横の横浜市旧市庁舎街区の再開発にも手を挙げて、いま一生懸命建設中ですが、ここで大きなライブビューイングアリーナやスポーツエデュテインメント施設などにも取り組んでいこうと思っています。スタジアムという場所を起点に、点から面にスポーツの喜びを拡げていくというのは私たちにとってもやりがいのあるビジネスです。それを通じて地域にも貢献していきたいと思っております。

スポーツの喜びを取り戻すシーズンの幕開けへ

最後に、コロナ禍のもと様々な制約がありながらもチャレンジを続けてきたこの3年間も振り返りながら、これからのスポーツ事業のさらなる発展への期待を込めて締めくくりました。

地元を大切にしながら、世界目線で、これら6つの考え方を大切にこれからもスポーツ事業に取り組んでまいりたいと思います。コロナ禍もあけて、応援団が本当にのびのびと応援をしてる姿を見るとPOSTコロナ、WITHコロナ、またスポーツの喜びを取り戻すシーズンの幕開けであると感じました。私たちにとって、スポーツの喜びは本当に大事な要素で、今年はそれを取り戻す1年です。そしてこの3年間、私たちは色々なことを学びました。ベイスターズの今永選手は先般、スポンサーさん達へのご挨拶の中で、「この3年間、本当に暗い時代にありました。お客さまが全くいない中でプレーをしたこともあり、本当に世の中暗く沈んでいましたが、その中で自分たちは何の苦労もせずに野球をさせていただきました。この感謝の気持ちを忘れません。」と挨拶をしました。選手たちもこの3年間で学ぶものがあったと思います。そして、私たちも、お客さまが観客席で声が出せないなら、家で、オンラインで盛り上がれないか、色々なことにトライしました。この3年間の拾い物を足し算、掛け算して、これまでにない素晴らしい充実したシーズンの幕開けとしていきたいと思います。そのようなタイミングで、このスポーツビジネスカンファレンス開催させていただきますけど、本当にありがたく思います。私たちの誇るDeNA SPORTS GROUPのリーダーたちが本音を語り、選手、パートナーの皆さま、それぞれの立場からスポーツ産業について語るという盛りだくさんのイベントにしたいと思っております。皆さんにも、何か意味のある会になりますよう祈っております。

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